うちの夫婦の馴れ初めを書く。嫁とは高校の同級生で同じ美術部だった。
入部してすぐ、クロッキーやっててほめられたのが初めての会話。嫁の方が数倍上手かったけど。
嫁は背が高くてショートカットに銀縁の眼鏡で、第一印象は「のび太のママみたい」。
よくよく顔を見ると目がくりっとしてて「なんかネコっぽいな」と。性格もサッパリして豪快かと思ったら
映画や本でポロポロ泣いたりして、なんだかネコっぽかった。
美術部は3年が3人、2年がいなくて1年が8人いた。その8人も俺と嫁を除くと2人がかけもちの幽霊部員で、
残り4人は今でいうアニメオタク。俺と嫁は美大か美術系への進学希望で、マンガ描いたりアニメの話を
してばかりのオタク組とはあまり交流がなくて、自然に2人でよく話をするようになった。
2年生になり、後輩が何人か入ってきて、3年生がいないんで顧問の指名で俺が部長になる。
うちの学校は9月が文化祭で、美術部も部活展示をしなければならなかったが、それまで作った作品を展示する
だけでは数も足りず見栄えも良くないんで、顧問と相談して嫁は油絵、俺は彫塑の新作を作ると決めた。
期末試験が終わってすぐ作品づくりに取りかかったが時間が足りず、夏休みに登校して作業することになった。
オタク組は同人誌を作るとかで別々に自宅でマンガを描いてたし、顧問も当番の先生もたまにしか来なくて、
ほとんど人のいない校舎の美術室に二人きり。
さすがにお互い意識するようになり、お互いに作業する後ろ姿をチラ見したり、夕暮れの帰り道(学校が
どイナカにあった)をドキドキしながら一緒に帰ったり、夜、明日の予定を確認とか口実作って電話したり、
楽しい夏休みだった。まあなんとか作品も完成し、嫁と俺の作品は文化祭でそこそこ好評を頂いた。
ちなみに、オタクたちの同人誌は残念ながら完成しなくて大ゲンカになっていて、展示の手伝いにもほとんど
顔を出さなかった。
県内有数の進学校に合格して入ったラグビー部では1年では1人だけのレギュラー。
すぐに彼女も出来て毎日が楽しくて充実していた。今で言うところのリア充だな。
夏休みには部活の合間を縫って二輪の中型免許も取って兄貴のCBX400で峠攻めてた。
当時は3ナイ運動真っ只中だったがバレなきゃ大丈夫だって思ってた。
彼女を乗せて海に行ったし(当時は免許取立てでもタンデムOKだった)ガス代欲しさにバイトもした。
まあご想像の通り最悪のパターンでバレる事になるんだな。まさに天国から地獄。
当時趣味系の携帯サイトが流行ってた頃、管理人をしていた隣の県の奴と仲良くなった。
ある日そのサイトの掲示板に、ちょっと控えめな感じの女子が現れた。
管理人の文章の端々から、「2人しか知らない何か」を毎回匂わせていたので、彼女なんだろうなと思っていた。
最初は人見知りをするように書き込みをしていた彼女も、掲示板で会話を交わすようになり徐々に俺に心を開いてくれた。
彼女とやりとりをするのが楽しくてたまらない。いつの間にか見た事もない相手を好きになっていた。
それでもその場所は彼女の彼が眼を光らせている掲示板。もちろん下心など皆無で趣味や雑談で話を弾ませた。それで充分だった。
当時俺にも彼女はいたが、「試しに付き合おう」と押されて付き合いだしたのに周りには「私が猛アタックされちゃって」と話してるのを知り、疲れきっていた。
そんななか俺の彼女(趣味は一緒なのでサイトも知っている)に「あの子、気に入ってるんでしょ?でも管理人の彼女だからね!」と言われ、イラッとする。
「お前に言われなくても解ってる。でも彼女が幸せならそれでいい。」心の中でそう思った。
それからすぐ、サイトでオフ会を開くことになった。
彼女はもちろん管理人と一緒に電車で集合場所に。
俺は近場だったからタクシーで彼女と向かった。
彼女が「2人一緒だと何か言われちゃうから☆ミ」的な事を言い出して、イラッとしつつも目的地近くからは別に向かった。
遠目から集まっているメンバーを観察してみる。
数名は顔見知り。管理人発見…てことは、その隣のロングヘアーは…こっち向け!!
と願った瞬間、彼女が振り返った。
地元政治家の後援会パーチーwが初対面。
襟が白いレースの紺ワンピースが似合ってて、いかにもお嬢様っぽかった。
目が合った途端スカートの裾をちょこんと持ち上げるお辞儀して、さっさと逃げてった。家に帰ってジーチャンに話したら、深窓の令嬢って奴だな!とか言って妙に盛り上がったのも良く覚えてる。
嫁友「ちょっと!!なんでアンタ昨日来なかったのよ!!!」俺「??」
嫁「もう~嫁友ちゃんもういいって・・・」
嫁友「手紙入ってたでしょ?!下駄箱に!!」
俺「中身見てない、ゴミ箱に捨てた。」
嫁「!!」
嫁友「!!」
中学2年の冬、昼休みの出来事。このあと、嫁泣く、嫁友他クラスの活発な連中大激怒。
当時、手紙で呼び出してpgrするのが流行っており、先日、幼稚園以来の親友が餌食。かなり腹が立っていた。
普段、教室の隅で大人しく本読んで生活してるが、食って掛かる連中を各個論破、胸倉掴んでくるバカを転ばし、無双状態。
最後に嫁、嫁友に
俺「人の気持ちの部分弄って遊んでるヤツは、今に痛いめ見んぞ!!」
俺「○○(嫁)、◎◎(嫁友)もう話しかけんなよ。」
嫁、嫁友大号泣。お陰さまで1年とちょっとの中学生活は更に地味になりましたさ。
友人からは結婚をせっつかれていた。
結婚したくないわけじゃなかったがモテないのを自覚していたし、自分の趣味が大事で、少なくとも
自分の趣味を理解して許してくれるくれるような女、できれば同族のオタクじゃないと結婚は無理、
とネガティブに思い込んでいた。
嫁は俺とぜんぜん違う社交的なタイプで、中学・高校ではソフトボール、大学ではガチなスポーツ系の
サークルにいて、スポーツ万能のスレンダーマッチョだ。知り合った当時は20代の末。背が高くて
姿勢が良くて肩幅も広くて、今もそうだけど腕にはビッと筋が浮き上がっていた。
美人だなあとは思っていたが、ルックスは怖め(天海祐希に似ていると言われる)だし、運動神経
ほぼゼロのメタボ気味オタク中年としては妙にコンプレックスも感じて、絶対この人と恋愛関係とかは
ないな、と思っていた。
だからなんで嫁が俺に惚れてくれたのかは未だによくわからない。仕事に対する真剣さとか責任感とか
真面目さとか言われたことはあるが、あんまりしつこく聞くと、嫁は顔を赤くして怒っちゃうんで。
中小企業なんで、嫁が俺を憎からず思っていることは社内では役員・上司や部下に到るまで(俺を除いて)
ほぼ気づかれていて、みんなで「(俺)と(嫁)さんをくっつけてやろう」という応援体制だったらしい。
それを結婚式のスピーチでバラされたときはもう恥ずかしくて恥ずかしくて氏にたかったぜ。
女子校女子大で如何にもお嬢様って感じの美人なので新入社員教育の頃からモテモテだった。
俺は非モテ系だったし職場も違うので嫁は別世界の住人で会えば挨拶する程度だった。そんな感じで時は流れ入社半年ほどすると同期のネットワークで嫁の悪い噂が流れだした。
・優しいのは外見だけで実は高飛車
・男を次々取り替えている
・コネ入社で仕事が出来ない
悪い事に全部事実だった。結果として嫁は会社内で嫌われ者になっていたのであった。
入社した暮れに同期だけの飲み会があったが俺は仕事が終わらなかったのでキャンセルした。
9時過ぎに嫁が俺のフロアにやってきてなにやら話しかける。
ちょうど仕事が終わった所だったので二次会に合流するのを止めて嫁と食事を取る事にした。
自分が浮いている事に気付いていた嫁は俺に色々言い訳めいた事を話した。
話を聞いている内に気付いた事は嫁は結婚相手を見つけるまでの腰掛のつもりで入社していて
男との付き合いは学生時代殆んどなくしかも重度のファザコンで、
父親が母親にしたような恋愛を望んでいるちょっと時代遅れの感覚の持ち主だった。
嫁は語る恋愛失敗談は男に対して経済的に完璧に頼れて嫁を優しくリードしくれて
我侭を聞いてくれて嫁をお姫様扱いしてくれるナイトになる事を要求したモノばかりだった。
「私、もう会社にいられない、どうしたらいいか分らない」という嫁にちょっとした助言をした。
高スペックの男を求める前に先ずは愛してくれる男を見つけろと。
収入が低くても、顔がブサ面でも、気が弱くて自分から告白できないよな奴でも許せと。
「そうかも知れないけれど、私の事愛してくれる人なんて居ないと思う」と言う嫁に、
グダグダ気味で早く帰りたくなってたので面倒になり、
君が気付いてないだけで必ずいる、案外身近にいると思う、と慰めた。
そうしたら何処をどう勘違いしたか
「え、そういう意味だったの?」って言った後、なにやら俺に向って急にニコニコし出す。
その日は直ぐに寝たかったので帰してもらえたが、
次の週から俺は嫁からロックオンされて猛追を受ける事になる。
当時大学俺は3年で嫁は1年、同じサークルだったが特に親しかった訳ではなかった。
サークルの忘年会でお節料理の話になり俺の出身県では全く食べないナマコの話がでた。
俺はあんなもの食べた事なかったので料理法も知らなかったが、
「あれを食べないとお正月が来ません」「家では毎年私が作ってます」と嫁が言った。
ナマコを食べた事ある他の人もさすがに作った事は無かったので
嫁が嘘をついているというような雰囲気になってしまった。
俺が言い出した事なのでフォローするつもりで「今度作ってもらおう」で話を閉めた。
話は大晦日の日にとぶ。朝嫁から電話があり下宿にいるか?と聞いてくる。
実家に帰らないで部屋の整理をしていたので居ると答えると時間が出来たので行くという。
理由を聞くとナマコだという。すっかり忘れてたので来なくていいと行っても、是非という。
結局1時間くらいしてスパーの袋にナマコを入れた嫁が下宿にやって来た。
まだ片付けてなかった俺の下宿の小さい台所のシンクをみて「汚い!」と怒った嫁は
勝手に掃除&整頓と、ナマコに塩をかけてしごいてヌメリを取る、を繰り返した。
なにやら嫁は解説してたがナマコを塩でもむ動作は違う事を想像させたので覚えていない。
お昼過ぎにナマコの酢の物が出来上がり嫁はそれに満足して帰っていった。
話は正月の2日にとぶ。嫁からまた電話がありナマコは美味しいか?と聞かれた。
正直言って食べる気はしなかったので食べてないというと猛烈に抗議してきた。
誤魔化すために、お節もお雑煮も年越し蕎麦も食べて無いと言うと逆に同情された。
そして「今からお雑煮を作りに行きますか?」というのでお願いした。
またスーパーの袋を持った嫁がやってきて台所で料理をする。
その後姿をみて(彼氏がいないのも知ってたので)決心した。
お雑煮を食べ終わった後「付き合ってくれないか」といったら、
「初詣もまだなんですか?」と呆れられ近所の神社に一緒にいった。
何をお祈りしたのかと聞くので「嫁とこれから毎年初詣にこれますよう」と祈ったというと
ようやく状況を察した嫁が真っ赤な顔をして頷いたのを決して忘れない。
うちは現在結婚6年目、俺32でヨメ30。独身の頃住んでいた1DKのアパートの隣同士だった。
ただお互い独身で、日中は仕事だし出退勤の時間が合わないしでまったく面識なかった。たしか5月下旬の土曜の夜11時ぐらい。ビデオ見ながらウトウトしてたら、隣から女の
言い争う大声と、ドスーン!バリーン!ってすごい音がして部屋が揺れた。さらに悲鳴。
こりゃただごとじゃないと思ってすぐ外出て隣の部屋のドアをノック。
「すいません隣の者ですけど大丈夫ですかー?」と声をかけたら、叫び声に混じって
「助けてーっ!」という悲鳴がする。でもドアに鍵がかかってて入れない。
パニクりつつ、ベランダづたいに隣の部屋に行こうと思いつく。暗いんでマグライトの
でっかい懐中電灯持って、一度ベランダの外に出て隣のベランダへ。
部屋は二階だったが無我夢中だった。ベランダのサッシを開けてカーテンめくったら、
大きいタンスや家具が倒れてて、蛍光灯がブラーンってなっててもう部屋中むちゃくちゃ。
その真ん中で中年の女が若い女に馬乗りになってバシバシ殴ってる。若い女の顔は
血で真っ赤。中年女は俺に気づいてすごい顔で睨んでくる。目が逝っちゃってた。
なんかもう、あまりのことに呆然としながら「な、なにしてるんですか」と聞く。
婆「あんた何よ!関係ないでしょ!」
嫁「助けて!助けてください!(半泣き)」
俺「とにかく乱暴は良くないですからやめてください」と中年女に近づくと、そいつが立ち上がって
何かを俺に突き出してきた。なんと包丁だ。
俺「危ないだろ!」
婆「あんた関係ないでしょ!あたしがこの女を(あと意味不明)!」さらに包丁を振り回してくる。
怖かったんで、こっちも懐中電灯をふるって中年女の腕を殴りつけ、包丁を落としたところで
突き飛ばして押さえ込んだ。暴れるんで嫁のバッグのベルトで腕を縛り上げ、警察を呼んだ。
嫁は血だらけで泣きじゃくっている。なんとかなだめようとしているところに警察到着。事情を
説明し、とにかく警察へということで嫁と俺と手錠をかけられた中年女はパトカーで警察へ。
俺は汚ねえジャージ姿だったから恥ずかしかった。
その親に連絡を取ろうとしたが実家の電話番号も住所も名前さえも分からなかった。
幸い親友は一命を取り止めたが、同じように下宿している自分は色々考えさせられた。親友を含め同じ学科の下宿生友達で相互の親の連絡先を教えあう事にした。
しかしサークル活動中に不測の事態が起きた場合を考えると不十分と言えた。
マイナーな活動内容のサークルで同学年には男は俺と幽霊部員、女は3人いた。
そこで俺は自宅生だったが一番よく話していた嫁に親の情報を教える事にした。
次にサークルであった時に親の情報を書いた紙を嫁に渡した。
がしかし、何か急用があったらしく嫁は後で見ると行って説明を聞かずに去ってしまった。
これが全ての誤りの原因といえる。
ここからは嫁の証言、いきなり俺に「これ保管して」と言われたメモ書きには、
俺の親の名前と連絡先が書いてある。さらに保険証番号とかもあった。
ん?とおもった後俺の意図を熟考した上での結論は
「俺から結婚を前提とした交際を申し込まれている」という事で落ち着いた。
大事な話だと俺が別れ際言ったのもその結論を裏付ける傍証になった。
何も自分からは行動を起す気はなかったが俺から言われたので考えても良いかとおもった嫁は、
その夜電話をしてきて「もう少し付き合いを深めてからでないと受けられない」といった。
それに対する俺の返答は「お願いだ(サークル内で)君しか考えられないんだよ」
それを聞いた嫁はそこまで言うならと思って「ならいいよ」といった。
その後嫁からデートのお誘いが何度もあった、無下にも出来ずに二人で会うとなかなか良い。
俺の方も段々好きになったので告白した。あの時の嫁の「?」顔は今でも忘れない。
事情を知り騙されたと思った嫁は「嘘つき」と言ってガン泣きした。何故俺が悪なのか分からなかった。
経過はどうあれ好きあっている事実は変わらないと説得し、ファーストキスをした。
理系だった俺は2年多く学生をしていたが、その間先に就職した嫁に助けられた。
結婚のプロポーズ時にその恩に絶対報いる、大切にすると約束した。
充分大切にしていると思うのだが喧嘩するとその件も含め詐欺師!と嫁になじられる。